一覧図解で読む物語の世界(古事記編)

知的好奇心あふれる世界の 複雑化した話を紐解き 図解でまとめます

「図解でまとめる技術」を活用した、工学系男子による、新たな学びの方法の研究サイト

オオ国ヌシとイナバのヤガミ姫

スサノウは出雲の国に降臨した後、スサノウは、母イザナ美の「黄泉の国」に近い「根の堅洲の国」に落ち着きました。

 

次に、話は、出雲の国の成り立ちに移っていきます。

出雲の国の主人公は、何といっても「オオ国ヌシ」。オオ国ヌシの人柄について、古事記では、「因幡の白兎(イナバの白ウサギ)」の物語を用いて解説しています。

この話自体は、ヤガミ姫とオオ国ヌシの出会いについての逸話であり、古事記(712年)の後に完成した本書紀(720年)には掲載されていません。古事記編纂者の、出雲の国への気遣いがみてとれるような気がしますね。

 

オオ国ヌシ(大国主命オオクニヌシノミコト)には、たくさんの兄弟がいました。気の優しい大黒様のようなオオ国ヌシは、別名オオアナムジと言われるように、他の兄弟から従者のように扱われ、荷物担ぎなどの重労働を課せられていました。

f:id:seibei-kagaya:20150521224032j:plain

鳥取県の山奥の因幡八上郡(現在の鳥取県八頭郡らしい)に、大そうきれいなお姫様が住んでいたそうな。それが因幡(いなば)のヤガミ姫。オオ国ヌシの兄弟は、このお姫さまをお嫁さんにしたいと思い、出雲の国から、海岸に沿ってプロポーズの旅にでました。皆の荷物を担がされたオオ国ヌシは、急ぐ兄弟たちの遥か後方。

f:id:seibei-kagaya:20150521224222j:plain

すると、途中(鳥取空港の少し手前の白兎海岸あたり?)で、丸裸のウサギが、ぐったりと横たわっていたのですが、意地悪な兄弟たちは、哀れに思うふりをして、

「塩水で洗って、山の上で、よく風に当たるといい。」と伝えたのです。

ウサギはその通りにしたところ、なおさら痛くなったのはいうまでもありません。痛さのあまり泣き叫んでいたところへ、遅れをとっていたオオ国ヌシが現れたンです。

訳を聞くと、どうやら、隠岐の島に住むウサギが、「ワニザメと自分の仲間の数を競いたい」とワニザメを本土まで並ばせ、数を数えるふりをし、まんまと本土に渡ったということ。

しかし、それは、単にウサギが本土に渡りたいがためについた嘘。無事、本土にたどり着いたところで、嘘をバラすと、怒ったワニザメはウサギを海に引きずり込み、丸裸にしてしまいました。

オオ国ヌシは、「真水で洗い、蒲の穂綿でくるむといい」と親切に教え、ウサギがその通りにすると、体は見事に回復。ウサギは、オオ国ヌシに大いに感謝し、

「あなたこそ、ヤガミ姫の旦那にふさわしい」

と予言したのでありました。

というのが、イナバの白ウサギの物語。

 

ところで、先のGoogle地図を見ると、白兎海岸から隠岐の島までの距離は、約80kmほど。ワニザメの幅80cmとすると、、、、、10万頭ほど集めなければなりません。ウサギがオリンピック級のマラソンランナーであったとしても、渡るのに4時間以上はかかることになります。

f:id:seibei-kagaya:20150521224600j:plain

「とっとり観光案内HP」によれば、白兎海岸の目の前に「淤岐の島(おきのしま)」があり、ここに兎が住んでいたとのこと。なるほど、ここならば、距離的にはワニザメを並ばせ、渡ることができそうです。

とはいえ、隠岐の島は海上の要所。本土への使者は、時折、襲われることがあるらしい。『使者を丁重に扱うことで、よい心証をヤガミ姫にもたらせることができる』ということを暗示していたのではないかと、阿刀田高は推察しています。

さらに話のスケール感を上げるために、遠くの隠岐の島を舞台にしたのではないかとも。そういう背景もあったのかもしれません。

さて、ウサギの予言どおり、ヤガミ姫は、オオ国主を選び妻となり、ハッピーエンドの感がありますが、同時にプロポーズしていた兄弟たちは、このまま済ますわけにはいきません。一斉にオオ国ヌシに襲い掛かります。

 

この逸話によく似た話が、ギリシャ神話で、トロイア国の王子パリスとスパルタ国の王妃ヘレネが登場する「トロイア戦争」の物語。

絶世の美女で結婚適齢期ヘレネに対し、ギリシャ中の国王が結婚を申し込む。あまりの多さに逆恨みされぬよう、養父テュンダレオスは「ヘレネが誰を選ぼうともこれに従い、ヘレネを奪う者あれば全員でこれを阻止する」旨の誓いをたてさせます。やがて、ヘレネはスパルタ王のメネラオスを選び、めでたく結婚。

そこへ、隣国トロイアのパリスが、奪い取っていったわけで、求愛者であった国王たちは黙っているわけにはいきません。かくして、この事件が、トロイア戦争が勃発した契機となりました。

 

「イナバの白ウサギ」のお話は、オオ国ヌシとヤガミ姫の出会いの物語。やがて、兄弟たちに逆恨みされたオオ国ヌシは、ひどい目にあったことから、根の堅洲の国のスサノウに助けを求めにいくことになったわけです。