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出雲の国に降臨したスサノウ

スサノウは、高天原から追放された悪者と位置つけられていますが、このままでは、話が丸くおさまりません。「一匹オオ神」的存在のスサノオを、ヒーローとして奉るために、オロチ退治の話が挿入されたのでしょうか。

 

高天原を追放されたスサノウは、やがて島根県鳥取県の県境にある船通山(別名:鳥上山)付近に降臨。日本海に流れ出る斐伊川の上流でもあるこの地は、東の岡山県、西の広島県の県境にも近いことから、たいそうな山奥にあったようです。

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スサノウが川辺にまどろんでいると、およそ人の気配のないこの川の上流から、なぜか「箸(はし)」が流れてきました。不思議に思って、川の上流を見に行くと小さな家を発見。中では、年老いた夫婦(足ナヅチと手ナヅチ)が、娘(櫛ナダ姫)を前に涙を流していました。

スサノウが訳を聞いてみると、この地では、毎年、ヤマタノオロチ(八岐大蛇流)がやってきて、娘を食べてしまうとのこと。すでに老夫婦の娘7人がその餌食になり、いよいよ最後の娘が犠牲になろうか、としている状況だったのです。

オロチの姿は、目玉は真っ赤に燃え、頭が八つ、尾も八つ、大きな山や谷を越えていくほどの体をもつ恐ろしい大蛇。スサノウは、娘の美しさに惚れたこともあり、嫁さんにすることを前提に、オロチに猛然と立ち向かいます。

八つの酒の桶を用意し、オロチにたらふく飲ませると、油断したオロチに向かって、十拳の剣(とつかのつるぎ)を「エイッ」とばかりに振り下ろし、身体を、ずたずたに切り裂いてしまいました。

しかし、しっぽの部分で堅いものにあたり、刃がこぼれてしまったのです。そこにあったのは、「草薙の剣(くさなぎのつるぎ)」といういわくありげな剣。ゴマスリの意味もあったのでしょうか、早速、高天原の天照ラスの神に献上。この剣は、降臨本番に登場する三種の神器のひとつになったことから、天照ラス大神の、喜びもひとしおだったのではないでしょうか。このことは、「出雲の人々を救った」という業績として高天原に評価された、と考えてもいいのかもしれませんね。

 

また、大蛇は斐伊川一帯の水神。体を表す川は鉄分の錆で赤く、眼は古代からの高炉火。毎年、洪水が襲うことから人身供犠(生贄)がささげられた、ということのよう。産鉄地であった出雲は、早くから鉄製の剣を生産。文化水準の高さを原動力とした勢力は大和朝廷を凌ぐことから、アマテラスの弟であるスサノウを配置。中央政権の礎を構築した、という説もあるようです。

 

さて、この老夫婦(足ナヅチと手ナヅチ)の古事記における位置づけを見てみましょう。この老夫婦の親は、山を司る神「オオ山ツミ」。さらにその親は、あのイザナ岐、イザナ美。ということは、イザナ岐とイザナ美から誕生したスサノウと、オオ山ツミは、兄弟ということになります。

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つまり、スサノウは、兄弟の孫娘と所帯を持ったことになるわけですね。また、オオ山ツミには、海を司る「オオ綿ツミ」というお兄さんがいますが、この二神は、八千穂降臨の場面に登場するので、その際に説明することにします。

 

その後、スサノウは櫛ナダ姫とともに出雲の国を駆け巡り、須賀の地を安住の地として、ここに館を建て仲良く暮らしました。

やがて歳月は流れていき、「草薙の剣の献上」で業績を上げたスサノウは、母の住む(埋葬されている)「黄泉の国」にほど近い「根の堅洲の国」に腰を落ち着けることになった、というわけです。

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高天原で誕生したばかりのスサノウの「母のところに行きたい」というわがままから、周囲を困らせましたが、「ヤマタノオロチ神話」にて、滞りなく収めた感がしないでもありません。

組織になじめない個性的な人材は、別天地で能力を発揮することもあります。高天原という組織になじめないスサノウは追放されたとはいうものの、出雲の国という新天地で能力を発揮。自らの夢を実現した、ということなのでしょう。

出雲の国の主といえば、この後に登場する「オオ国ヌシ」。スサノウと櫛ナダ姫の四代後の神といわれていますが、「オオ国ヌシ」とスサノウの繋がりには、なにか無理があるように思えてなりません。そもそもスサノウが、何故、出雲の地に降臨したのか。物語としての興味はつきません。